
会社が破産する場合は、従業員を解雇することになります。
また、会社を破産させずに継続していく場合であっても、やむを得ずリストラの一環として従業員を解雇することもあるでしょう。
解雇が行われると、その有効性を巡って会社と従業員とで紛争になる例が非常に多いですから、解雇の実施に際してはきちんとした法的プロセスを経るだけでなく、従業員の感情的な面にも配慮する必要があります。
なお、一口に解雇とは言っても、解雇の後に事業を継続するつもりなのか、それとも事業を廃止するつもりなのかによって、取るべき手続は異なります。
いずれにせよ、「業績が悪いから」という理由で簡単に解雇できるわけではない、ということはしっかり覚えておいてください。
一部の従業員について整理解雇を行い、他の従業員の雇用を維持したい場合、過去の判例にて以下の4要件が示されています。
整理解雇はこの要件にすべて適合しないと無効(不当解雇)とされる可能性があります。
整理解雇を行うには、人員削減をしなければ経営を維持できないという程度の必要性が認められなければなりません。
解雇は最終手段であることが要求されるため、役員報酬や給与の削減、新規採用の抑制、希望退職者の募集、配置転換、出向等により、整理解雇を回避するための経営努力がなされ、解雇に着手することがやむを得ないと判断される必要があります。
解雇するための人選基準が合理的で、具体的人選も合理的かつ公平でなければなりません。
整理解雇については、手続の妥当性が非常に重視されています。
例えば、説明・協議、納得を得るための手順を踏まない整理解雇は、他の要件を満たしても無効とされるケースが多いです。
また、従業員を常時10人以上雇用している事業所は、法律上就業規則の作成と労働基準監督署への届出義務があるため、整理解雇についての規定や手順を就業規則に盛り込んでいる必要があります。
事業廃止により全従業員を解雇する場合には、整理解雇の4要件とは別の基準で考えることになります。
具体的には、下記の5項目を考慮して手続が妥当であったといえない場合には、解雇権の濫用として無効とされる場合があります。
上記で説明した「整理解雇の4要件」や「事業廃止による全員解雇の要件」を満たした場合でも、簡単に従業員を解雇できるわけではありません。
以下の2つの点にも注意する必要があります。
従業員が当然解雇を言い渡されて路頭に迷わないよう、労働基準法では、従業員を解雇をするときには30日以上の予告期間を設けることが要求されています。
30日以上の解雇の予告期間を設けられない場合は、30日に満たない日数分の平均賃金(過去3ヶ月の給与の日割に相当する額)の支払が義務付けられています。
つまり、前もってしっかりと解雇の準備をしていないと、余計なお金(解雇予告手当)を支払うことになります。
したがって、やむを得ず従業員を解雇しなければならない場合は、余裕を持った計画と予告期間が必要になります。
下記に該当する従業員は、その事由に該当している間または該当しなくなった日後30日間はどのような理由でも解雇することができません。
また、下記のような理由で従業員を解雇することはできません。
整理解雇において下記を基準にして人選を行った場合、解雇が無効になります。
このように会社を整理する上で従業員を解雇する場合には、法律や過去の判例等による厳格なルールが適用されます。
繰り返しにはなりますが、「業績不振だから」という理由で会社が簡単に従業員を解雇することはできません。
廃業や事業再生のために従業員を解雇しなければならない場合には、トラブル防止のため、事前に弁護士や社会保険労務士等の専門家に相談されることをお勧めします。
High Fieldグループでは、弁護士と社会保険労務士が協力してアドバイスをさせていただきます。