
会社が破産する場合、通常は社長個人も破産することになります。
破産をする場合、めぼしい財産は処分するのが原則ですので、社長の自宅も処分の対象になります。
結論から申し上げますと、「自宅の所有権を失う」ことは避けられません。
しかし、協力者がいれば、「自宅に住み続ける」ことは可能です。
一口に自宅の処分といっても、大きくは次の4つに分けられます。
種類 | 自宅を買い受ける者 | 自宅に住み続けることの可否 | 家賃の支払 | 特徴・ポイント |
---|---|---|---|---|
任意売却(親族間売買) | 親族 | 可能 | 通常は不要だが、買い受ける親族によっては家賃を要求されることもある。 | 自宅を購入できるだけの資金がある(またはローンを組める)親族が必要になる。 |
任意売却(リースバック) | 投資家 | 可能 | 一般的な家賃相場よりは高めの家賃になる。 | 数年後に自宅を買い戻すことを約束する場合が多い。買い戻せない場合には、投資家はさらに第三者に売却する。 |
通常の任意売却 | 居住目的の第三者 | 不可能 | 自宅には住み続けられないので、新たに賃貸住宅を探す必要あり。 | 自宅に住み続けることはできないが、引越し代を援助してもらえることが多い。 |
競売 | 投資家・居住目的の第三者 | 原則として不可能 | 自宅には住み続けられないので、新たに賃貸住宅を探す必要あり。 | 自宅に住み続けることはできない。引越し代も出してもらえないので、ほとんどメリットなし。 |
ここからは、それぞれの自宅処分方法について補足説明をしていきます。
文字どおり、親族に自宅を購入してもらう方法です。
親族であっても適切な代金を支払ってもらう必要がありますので、「親族に安く売る」ということはできません。
また、当然ながら、親族が相応の資金を捻出する必要があります。
したがって、資金を捻出できる親族がいない場合には、この方法を利用することができません。
投資家に自宅を購入してもらい、投資家から自宅を賃借して住み続ける方法です。
賃借ですので、当然ながら賃料を支払う必要があります。
この際、賃料は一般的な相場よりも高くなります。
また、通常は数年後に自宅を買い戻すように求められます。
買い戻すことができない場合、投資家は自宅をさらに第三者に売却し、投下資金を回収します。
投資家は投資としてお金を出す以上、「高めの賃料設定」「買戻し」はやむを得ない条件であると言えます。
親族でも投資家でもない第三者に住宅を購入してもらう方法です。
中でも、抵当権付きの自宅の売却を「任意売却」と言います。
任意売却のメリットは、競売よりも高く売れることと、債権者から引越し代を支援してもらえることです。
親族や投資家の協力が得られない場合には、この任意売却を検討する必要があります。
本来、抵当権付きの自宅は競売で処分するのが原則ですが、競売の落札価格は一般的な相場よりも低くなります。
また、誰かが引越し代を支援してくれることもありません。
粘って競売になっても何のメリットもありませんので、競売になる前に任意売却の手続を取るほうが賢明です。
ここまでは、社長の自宅は処分される前提で説明をしてきました。
しかし、個人再生という方法により、自宅を残せる場合があります。
破産の後に自宅がどうなるのかは、社長にとっては切実な問題です。
自宅に住み続けることは簡単ではありませんが、当事務所は不動産会社とも協力しながら精一杯のサポートをさせていただきます。
安易に自宅を処分したりせず、まずは弁護士にご相談ください。